家庭崩壊の危機を救ったケアマネジャーの提案

このままではいつ事件に発展してしまってもおかしくありません。心配した母親と美知子さんは、ケアマネージャーに相談することにしました。

ケアマネージャーからは「できるだけ早くお父様の身の安全を確保することが大事です。緊急避難先として、ショートステイを検討してみましょう。その間に、お父様が入れそうな施設を探すことにしましょう」ということになりました。

ショートステイでは、短期間だけ施設に入所し、介護を受けることができます。父親の老齢年金は月額約17万5000円。その金額の範囲内でまかなえそうなショートステイ先を探してもらうことにしました。

その後、ケアマネージャーに特別養護老人ホームで行われているショートステイを見つけてもらい、そこを利用することになりました。しかし利用期間の30日はあっという間に過ぎていきました。ケアマネージャーと話し合った結果「再び自宅に戻ってくるのは危険」と判断。めぼしい施設が見つかるまで、父親はロングショートステイ(ショートステイの長期利用)をすることになりました。

これで当面の危機は回避できました。

父親の件が一段落したあと、ほっとするのも束の間。美知子さんには別の心配事が頭をよぎりました。それは兄のこれからのこと。

兄はもうすぐ50歳になりますが、今まで仕事らしい仕事はほとんどしてきておらず、今後も仕事をして収入を得ることは難しいことでしょう。兄は母親と一緒に生活をしているので何とかなっていますが、母親もすでに80歳を超えています。

母親の老齢年金は月額約8万円。足りない生活費は母親の貯蓄を取り崩して何とかしのいでいます。しかしこのような綱渡りの状態では、いつ生活が破綻してもおかしくありません。

「まずは兄の無収入状態を解消しなければ。もう私が動いて何とかするしかない」
美知子さんは強くそう思いました。

●限界を迎えた実家のために覚悟を決めた美知子さん。しかし、立ちはだかるのは「48年間、一度も病院へ行ったことがない」という大きな壁でした。家族の未来をかけた、美知子さんの奮闘劇の結末は――。後編【親の年金を食いつぶす48歳ひきこもり兄に我慢の限界…絶望の底から家族を救った妹の「執念の説得」】で詳説します。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。