<前編のあらすじ>
結婚3年目の茉莉は、夫・稜人の浪費癖に不安を抱いていた。稜人は気に入ったスニーカーを衝動買いし、先月に続いて約3万円を使う。将来は子どもも欲しい茉莉は、何度も貯金を提案していたが改善する気配はなかった。
そんなある日、稜人は子猫を飼いたい言い出す。飼育経験のない稜人の「2人で力を合わせれば何とかなる」という言葉に茉莉は不安を覚えるが、猫好きでもあったため了承。2人で世話をすることを約束し、子猫のナギを迎える。
準備の多くを茉莉が担ったものの、稜人はナギをかわいがり、動物病院の予約も自ら行うなど積極的に世話をした。夫婦の会話も増えていくが、ある日、普段はすぐ近寄ってくるナギがまったく反応を見せず、茉莉は異変に気づく。
●前編【「3万くらいだったかな」将来を心配する妻をよそにまた衝動買い…浪費癖夫が迎え入れた“新しい家族”とは?】
突然動かなくなったナギ
茉莉はナギを抱いたまま、寝室にいる稜人のもとへと急いだ。
「稜人、起きて! ナギの様子がおかしいの!」
「……え?」
眠たそうに体を起こした稜人だが、抱きかかえたまま動かないナギを見て、目を見開いた。
「ど、どうしたんだ……?」
「分からない。朝起きて確認したらずっとこんな感じで。体温はあるけど、全然動かなくて反応してくれないの……!」
稜人は真面目な顔で茉莉を見た。
「とりあえず病院に行こう。この前予約した病院は土曜日も診療をやっていたはずだ」
そう言うと、稜人は立ち上がり、すぐに着替えだした。茉莉もナギをキャリーケースに優しく入れて、近くの動物病院へと向かった。病院に到着するまでの間も茉莉は助手席でキャリーケースの中を何度も確認し、声をかけ続けた。
「ナギ、もうすぐ病院だよ。大丈夫だからね」
しかし、相変わらずナギは横になったままで反応を見せてはくれなかった。もし何か大きな病気だったらどうしよう、と不安が駆け巡った。もっと早く異変に気づけていれば、こんなことにはならなかったのではないかと後悔もした。
隣で運転する稜人にはいつもの明るさはなく、信号で止まるたびにチラチラと心配そうにナギの入っているキャリーケースに目を向けていた。
病院に到着すると、すぐに受付で事情を説明した。その日はまだ病院にはほかに患者がいなかったこともあって、すぐに診てもらうことになった。
ナギが検査を受けている間、茉莉たちは待合室のソファに座っていた。茉莉はうつむいてナギの無事を願った。稜人はじっとしていられないのか、座ったり立ったりを繰り返しながら、診察室のほうをのぞき見ていた。
