<前編のあらすじ>

超都心のタワーマンションに暮らす真理子さん(仮名・46歳)と、飲食店を複数経営する夫。

東京の中学受験に知識のなかった真理子さんは、息子の成績が上がらないたびにサービスを追加していきました。大手塾に加え、個別指導教室が2つ、家庭教師、オンライン教材。6年生の夏には、5週間で50万円以上が引き落とされていました。

しかし課金を増やすほど課題は終わらなくなり、息子の時間は削られていきます。

●前編: 「今日はオレ、どこの塾に行けばいいんだっけ?」息子の問いに答えられなかった母が陥っていた「中学受験の課金地獄」

年収が半分に。それでも課金を止められなかった

小学6年生の頃、思いがけない事態が起こります。夫の店の売り上げが大きく落ちてしまったのです。原材料費や人件費が上がったこと、再開発で人の流れが変わったことが影響していました。手取り年収1600万は半減しました。

住宅ローンとタワーマンションの管理費・修繕積立金、生活費に加え、すでに最大限に膨張していた教育費が家計を圧迫します。日頃は教育に無関心の夫からは「塾、整理できないの?」と言われました。

しかし受験まであと1年を切ったタイミングで、真理子さんはどれもやめられませんでした。ここで個別をやめて成績が下がったら。家庭教師を断って不合格になったら。オンライン教材をやめた週のテストに、ちょうど同じ問題が出たら――。

それは期待というより、恐怖に近い感情でした。

真理子さんは慌てて仕事を探しましたが、長い専業主婦期間があり、子どもの送迎や受験サポートが一番大切です。希望する条件の正社員の仕事はまったく見つかりませんでした。しかしそうしている間にも口座からどんどんお金が落ちていきます。そこで前編でご紹介したように、駅前のファストフード店でパートを始めたのです。

「自分でも、塾を整理したほうがいいとわかっていました。でも、途中でやめたら、それまでに払ったお金まで無駄になる気がしたんです」

典型的な“サンクコスト”の状態です。すでに支払ったお金や時間を惜しむあまり、将来必要になる支出まで冷静に判断できなくなる。教育費は子どもの将来と結びついているため、親はなおさら引き返しにくくなります。