学校見学へ行っても「正直、違いがわからなかった」

これだけの費用をかけていても、息子の成績は思うようには上がりませんでした。模試の結果に一喜一憂し、志望校は何度も変わりました。学校見学にも足を運ぶものの、真理子さんはパンフレットを抱えて帰宅するたび、余計にわからなくなったといいます。

「どの学校も説明会ではいいことを言いますよね。施設がきれい、面倒見がいい、大学進学実績も伸びている。正直、何を基準に選べばいいのかわかりませんでした。今思えば、私自身のなかに確固とした優先順位がなかったからだと思います」

混乱した真理子さんは“詳しい人”の言葉に頼りました。塾の先生、家庭教師、先輩ママ、LINEで流れてくる口コミ。ところが、勧める学校も勉強法も人によって違います。情報を集めるほど判断軸を失うような状況でした。

受験本番、息子は第一志望には届かず、たくさん受験した併願校のなかで合格した中堅の私立中学校へ進学しました。幸い、入学してみるととてもいい学校で、現在は部活動にも熱心に取り組み、楽しく通っているそうです。

結果を見れば、決して失敗ではありません。それでも真理子さんの胸には、割り切れない思いが残りました。

大手塾一本で合格した家庭を見て気づいたこと

受験が終わってみると、周囲には大手塾一本で、きちんと志望校に合格した子が何人もいた、と真理子さんは冷静に語ります。なかでも印象に残ったのは、同じ小学校の母親だそう。ママ友グループに入らず、LINEの情報にも振り回されない。上の子の中学受験を経験していたこともあり、「うちは個別までは通わせられないから、塾の復習だけ」と、いつも笑顔でさばさばしていました。その家庭の子どもは学力を着実に伸ばし、希望の学校へ進学しました。

「あのお母さんは、お金をかけなかったのではなく、何をしないかを決めていたんですよね。私は、何か情報が来るたびに、やらないことで不利になるのが怖かった。自分の基準がありませんでした」

真理子さんは今、そう振り返ります。また、もう一つの反省は、父親が中学受験にほとんど関わらなかったことだといいます。夫は仕事が忙しく、学校選びにも勉強にも興味を示しませんでした。家計が苦しくなって初めて支出を減らしてほしいと言いましたが、その頃には受験直前。真理子さん一人では冷静に立ち止まることができませんでした。

夫婦のどちらかが伴走の中心になる家庭は珍しくありません。それでも、お金の上限、追加サービスを申し込む基準、志望校の優先順位など、クリティカルな部分は早い段階から夫婦で共有しておく必要があります。