「まだ払うの!? 夏のボーナスは使い果たしたし、引き落としは11月で冬のボーナスは間に合わない。普通預金にはもうお金がないから、ここからは全部君が出して」
その言葉に、洋子さん(仮名・44歳)はうなだれながらも、「ついにこの時が来た」と思ったそうです。
小学6年生の長女が通う塾から届いた冬期講習の申込書。深夜のダイニングテーブルに置き、洋子さんと夫の幸一さん(仮名・46歳)は緊急会議をしていました。
冬期講習、正月特訓、志望校別直前特訓。1月、2月になれば8校分の受験料最大2校分の入学金や初年度授業料を支払う予定です。
受験が近づくにつれ、お金の支払いは加速していきます。4年生で大手中学受験塾に入ったときから、すでに200万円以上を支払っていました。そのうえでの「ラストスパート」ですから、幸一さんが根を上げるのも無理はありませんでした。
夫の幸一さんはメーカー勤務で年収約500万円。妻の洋子さんはフリーのWEBデザイナーとして働き、年収は約400万円。世帯年収は約900万円で、12年前に都内で2LDKの中古マンションを購入し、子どもは2人。
一般的に見れば、決して教育費が払えない家庭ではありません。しかし近年、中学受験の現場を取材していると、「世帯年収900万〜1000万円台なのに苦しい」という声を聞く機会が増えています。
原因は教育費そのものが高額になっていることに加え、住宅ローンや物価高が重なっているからです。洋子さんと幸一さん夫婦の「資金繰り」が悪化したのも、まさにそのような背景によるものでした。
2人の娘の中学受験は、洋子さんが主導して決めたといいます。つまり洋子さんは塾の費用などについて、ある程度の見当がついていました。中学受験をするなら、大手塾への支出だけでも3年間で250万円前後になることは珍しくありません。6年生の秋となれば、課金はむしろここからが本番です。
ところが中学受験に乗り気でなかった幸一さんは、そこまでの金額を想定していませんでした。