夫婦の誤算はボーナス減額と仕事の打ち切り

結婚以来、生活費や住宅ローン、教育費は夫婦で収入に応じて負担してきた幸一さんと洋子さん。しかしコロナ禍で数年間ボーナスが大幅に減額されたこと、昨今の物価高、フリーランスである洋子さんの収入が思うように増えなかったことが重なり、家計は徐々に苦しくなっていました。

6年生の追い込みにかかる費用を何度も見返したあと、幸一さんはしばらく黙り込み、そして宣告しました。

「たかが子どもの塾に、こんなに払うのか? 目を覚ませよ。今までだって十分払っただろう」

「なんとか塾代を削れないのか。そもそも私立中学なんて、うちみたいな家が行くところじゃないだろう」

その瞬間、娘の勉強に3年間伴走してきた洋子さんは、頭に血が上ったといいます。

ここまで頑張ってきて、今さら講習を削るという選択肢は考えたこともありませんでした。

中学受験は、大手塾のカリキュラムやテストが勉強の大きな軸になります。大学受験のように受験生が自分で学習計画を立てることは、小学生には難しいからです。学校で習う内容との難易度にもギャップがあるため、塾に頼らざるを得ないのが実情です。

そのような事情に詳しくない幸一さんですから、先のような発言になったというわけですが、感情的になるのも無理なからぬこと。

「こんなにかかるなんて聞いていない。勉強なんてどこへ進学してもできるだろう。身分不相応の背伸びは破滅を招く」

その発言は、一般的に考えて真っ当なことにも思えます。つまり夫婦の衝突は、塾代だけの問題ではありません。教育観の違いが、表面化した瞬間だったのです。