<前編のあらすじ>

海斗は結婚17年目の妻・遙香の様子がこのところおかしいと感じていた。会話は素っ気なく、常にスマホを手放さない。遙香の勤務先ではボーナスが全額カットされたといい、仕事のストレスが原因だろうと海斗は考えた。

しかし数日後、寝室でブランドものと思われるネックレスを発見。ボーナスが出ないと言っていたはずの遙香が高価なアクセサリーを購入していたことに、海斗は疑念を抱く。さらに遙香は風呂場にまで携帯を持ち込むようになっていた。

ある夜、遙香のスマホ画面に見知らぬ銀行アプリとまとまった金額の残高が映っているのを目撃してしまう。すべてをつなぎ合わせた海斗は、遙香が離婚を準備しているのではないかという結論にたどり着いた。

●前編【ボーナスなしの妻が隠していた口座と高級ネックレス…結婚17年目の夫が疑った裏切りの正体

海斗が頼った唯一の相手

翌日の昼休み、海斗は会社近くの定食屋で博樹と向かい合っていた。博樹は遙香とも何度か会っていて、家庭のことを話せる数少ない相手だった。海斗は食事をしながら、博樹に一連のことを包み隠さずすべて話した。水を飲んだあと、博樹は軽く息を吐き出した。

「なるほどな。それで離婚の準備をしてるんじゃないかと……」

「……そうなんだ」

博樹はゆっくりと腕を組んだ。

「海斗、さすがにそれは考えすぎじゃないか?」

「でもさ、俺に隠れて口座を作って金を貯めてるなんておかしいだろ? ボーナスがなかったって言ってるのにブランドもののネックレスも買ってたし。俺に何かウソをついてたり、隠し事をしてるのは確実なんだよ」

「お前昔から一度気になると悪い方に考えすぎるところがあるだろ?」

「いやそれはそうかもしれないけど……」

「俺は離婚準備をしてるとは思わないよ。少なくとも今の海斗の話は憶測に過ぎないし」

博樹の指摘に海斗は反論することはできなかった。

「まだ奥さんと話し合ったりとかはしてないんだよな?」

「聞けるわけないだろ……。もし俺の考えが全部合ってたらもう終わりってことだぞ……?」

「でも聞かないままじゃ何も変わらないぞ?」

博樹の言葉に海斗はうなずいた。

「それはわかってるけど……」

「海斗が不安な気持ちを持つのは理解できる。でも勝手に結論を出すな。疑いの気持ちを持ったまま生活すると距離が生まれるだけだって。海斗の考えていることが合ってるかどうかわからないんだから。だから、ちゃんと話をするべきだ」

「……そうだな。わかったよ。でももし本当に離婚なんてことになったら……」

自分の生活のこともそうだが、悠真のことも心配だった。受験を頑張っているというのにこんなゴタゴタに巻き込まれることで悪影響が出ないようにしないといけないと思った。

「離婚だってまだ決まったわけじゃない。海斗の言動で変わるかもしれないぞ?」

「……そうか?」

「諦めるなよ。今日は仕事が終わったらなんか奥さんにプレゼントでも買っていけよ」

海斗は首を横に振った。

「そんなプレゼント1つで気持ちが変わるなんてことはないよ」

「違うって。別にもので釣るとかそんなことじゃない。常にパートナーのことを考えているということを伝えるんだよ。大事に思ってるってことをわかってもらうんだ。海斗が家庭を第一に考えてるのを俺は知ってるよ。こうしていろいろ話す中で端々にそういう気持ちだってのが伝わってくるからな。でもそれに奥さんは気付いてないかもしれない。だからこれを機にちゃんと伝えてみるんだよ。そうしたら何か変わるかもしれないだろ?」

博樹は熱っぽく語っていた。その言葉に海斗の気持ちが固まった。

「……そうだな。とりあえずちゃんと遙香と話をしてみるよ。自分の気持ちもそのときに話してみる」

海斗の決意に博樹は満足そうにうなずいた。