<前編のあらすじ>
フリーランスとして働きながら、スーパーのパートも掛け持ちする芽以。小学4年生の息子・颯太が家にいる夏休み中の昼食作りを負担に感じていた。母親仲間から出前を利用していると聞き、フードデリバリーを試すことにする。
颯太は毎日違う店の料理を選べることを喜び、芽以も仕事と出勤前の時間に余裕ができた。ところが、出前の容器を見つけた夫・聡は、毎日利用していたことを厳しく非難。「そんなの母親失格だ」と芽以を傷つける。
翌日から芽以は出前をやめたが、颯太は店の料理のほうがおいしいと不満を口にした。夫の言葉にも傷ついていた芽以はついに我慢の限界を迎え、今後は自分で昼食を用意するよう颯太に言い渡した。
●前編【「お母さんの美味しくない」「母親失格」家族は言いたい放題…夏休みの昼食作りに母は限界】
息子に任せた昼食
芽以は宣言どおり昼食を作らなくなった。食卓に並ぶのは、パート先で買ったパンや惣菜ばかり。颯太は最初こそ不満そうにしていたが、先日のことを気にしているのか、もう出前がいいとは言わなかった。
そんなある日、颯太はコロッケとロールパンを見比べたあと、パンに切れ目を入れ始めた。
「何してるの?」
「挟んだら、コロッケパンになるかなって」
芽以は口を出さず、そのまま見ていた。颯太は洗ったレタスも一緒に挟み、ソースをかける。
「これ、おいしい。お母さんも食べる?」
半分に切ったものを差し出され、芽以は戸惑いつつ受け取った。
「ありがとう」
コロッケとソースがパンによく合っていた。おいしいことを伝えると、颯太はうれしそうに笑った。
翌日、颯太はご飯に唐揚げと溶き卵をのせ、からたま丼を作ろうとして失敗した。電子レンジで加熱しすぎたらしい。
「何秒ならいいと思う?」
「最初は少なめに設定して、足りなければ少しずつ増やせばいいんじゃない」
「そっか。何秒がベストか実験してみる」
「ちゃんとレンジに入れていい器か確認してね」
電子レンジや包丁、火を使うときのルールは、以前から家族で決めてある。最初は不安があったものの、家庭科の授業で習ったとおりに作業し、手際も悪くなかったため、芽以が細かく教えたり、付きっきりで見守ったりする必要はなかった。
やがて、颯太は欲しい食材を紙に書くようになった。
「帰りに、これ買ってきて」
メモにはチーズとハム、冷凍のうどんが並んでいる。芽以は理由を聞かず、買い物リストの食材をかごへ入れた。最初は罪悪感を抱いていた芽以も、生き生きとした颯太の表情に、今日はどんな料理が見られるのか、楽しみにするようになっていた。
