<前編のあらすじ>
入社4年目の翔平は、憧れの上司・相沢から、大型案件のプロジェクトリーダー候補に推薦したと告げられる。翔平は早くも出世コースに乗ったと喜び、妻・美咲にも報告した。
数日後、同期との飲み会で浮かれていた翔平は、まだ正式に決まっていないにもかかわらず、大型案件のリーダーを任されることになったと話す。同期たちは驚き、飲み会はお祝いムードになった。
その2日後、翔平は再び相沢に呼び出される。正式任命だと思って会議室へ向かったが、相沢から告げられたのは「その件はなくなった」という予想外の言葉だった。
●前編【「完全に出世コースに乗ったなぁ」大型案件推薦を同期に自慢…浮かれた若手社員を待つ急転直下】
上司が問題視した翔平の行動
「ま、待ってください。どうしてですか?」
翔平は振り絞った言葉で質問した。相沢はしばらく黙ったあと、静かに口を開いた。
「小山くん、この前、私が話したことを誰かに言ったか?」
相沢の質問を聞いた瞬間に、飲み会の光景が頭に浮かんだ。
「……同期には少し話しました。でも会社の人間だけですし、案件の詳しい内容までは何も言ってません」
「そういう問題じゃないんだ。私が話した時点ではまだリーダーを含め、社内で調整している段階だった。それを君はもう自分が任されると決まったかのように周りに話したそうだな」
「そ、それは……」
言い訳をしようと思ったが、翔平の口からそれ以上言葉は出てこなかった。翔平は拳を固めて目線を落とした。
「広告の仕事は正式発表前の情報を扱うことも多い。新商品の情報はもちろん、予算や企画、人員についてだって同じだ。それに今回リーダーを任せれば、今まで以上にそういう情報に触れることになる」
相沢の言葉が翔平の胸に突き刺さった。
「君に任せようと思ったのは仕事ができるからじゃない。チームをまとめる立場として信用できると思ったからだ」
「……はい」
「まだ決まってない話を簡単に飲み会で話した。その軽さは問題視しないといけない。もしこれがクライアントから預かった情報だったら大変なことになっていた。そんなリスクのある人間に多くの人が関わるプロジェクトの責任者を任せることはできない」
翔平はただうつむくことしかできなかった。
「……すみませんでした」
翔平は頭を下げて会議室を出た。
