無理を続ける夫を心配する妻

暗い日々を送っていたある夜、美咲と一緒に晩ご飯を食べていると、美咲が声をかけてきた。

「ねえ、久しぶりに2人でゆっくり旅行にでも行かない? 温泉とか入りたいなって思ったんだけど、どう?」

翔平はゆっくりと顔を上げた。

「いや、まだ無理だよ。正月になったら行けるかもだけど……」

「お休みとか取れないの? 有給余ってるとか言ってなかった?」

翔平は美咲から休みを取れと言ってきたことに驚きを覚えた。

「……珍しいね。そんなことを言うなんて」

翔平は美咲を見つめた。美咲は目を細めて翔平を見ていた。その表情からは翔平のことを心配している気持ちがすぐに伝わってきた。

「……俺のために言ってくれてるのか?」

「……休んだほうがいいわ。じゃないとちょっと怖いよ……」

翔平は軽く息を吐いた。

「ごめんな、心配かけて。いい暮らしさせるなんて偉そうなことを言っておいてさ……」

美咲は頬を緩めて首を横に振った。

「私は翔平と一緒にいられるだけで、十分いい暮らしだと思ってる。お願いだからもう無理はしないで……」

美咲の言葉に翔平は顔を伏せた。今まで胸の内にためていた感情と言葉が一気にあふれ出た。

「ごめん、ごめんな。俺、もう無理かも……」

唇を震わせる翔平を見て、美咲は優しく声をかけた。

「あなたの好きなようにしていいからね。2人で力を合わせれば何とでもなるから」