仕事から帰ってきた佳織は買い物袋を台所に置いて汗を拭った。7月末の暑さにもうすでに辟易としていた。

スーパーで購入したものを冷蔵庫に入れ終わったところで、息子の大輝が台所にやってきた。大輝は佳織が29歳のときに出産した長男で、現在は小学1年生になっていた。

友達へ貸した大切なお金

「お母さん、おかえり」

「ただいま。今日はずっと家にいたの?」

佳織の問いに大輝は首を横に振った。

「ううん。陸人たちと遊んだよ」

夏休み中の大輝は友達と遊ぶなど、毎日を満喫していた。

「そう。もう外は暑いから、なるべく室内で遊ぶようにしなさいよ。熱中症とか危ないからね」

そう言いながら佳織が夕食の準備を始めると、大輝が佳織に向かって手を差し出してきた。

「ねえ、お小遣いちょうだい。また明日も遊ぶからさ」

大輝の言葉に佳織は疑問を抱いた。

「何言ってるの? お小遣いならこの前、500円を渡したでしょ?」

夏休みに入ったとき、熱中症対策として少しでも喉が渇いたら水などを買うようにと、大輝にお小遣いを渡していた。

「もうないよ」

「何に使ったの?」

「俺は使ってないけど、陸人と文晴がお菓子買いたいって言うから貸したんだよ」

大輝の言葉に彩佳は思わず頭を抑えた。

小学1年生でお金の貸し借りをするなんて、想像もしていなかった。

「大輝、友達とお金の貸し借りなんてしちゃダメよ」

「でも2人とも困ってたんだよ」

大輝は納得できない様子で唇を尖らせた。佳織がさらに説明をしようとしたところで、玄関の扉が開く音がした。

「ただいま」

仕事から帰ってきた翔太がネクタイを緩めながらリビングに入ってきた。不動産会社に勤める翔太は、家族のために毎日遅くまで働いているが、夏は繁忙期ではないため、定時に帰ってくれていた。

「どうした? 2人ともなに話してたんだ?」