夫が教えた危うい金銭感覚

「大輝が、この間渡した500円を友達に貸しちゃったんだって」

「だって困ってたから。すぐに返すって言ってたし……」

大輝はTシャツの裾を握りながら答えた。翔太は少し考えたあと、大輝の肩に手を置いた。

「まあ友達が困ってたら助けたくなるよな。大輝も悪いことをしようと思って貸したわけじゃないんだろ?」

「うん」

「ちょっと待ってよ。あなたまでそんなこと言わないで」

佳織が口を挟むと、翔太は困ったように笑った。

「助けようとした気持ちは悪いことじゃないだろ。大輝は借りた側じゃなくて貸した側なんだしさ」

「貸した側なら問題ないってことじゃないの。返してもらえなかったら、友達との関係まで悪くなるかもしれないのよ?」

「ああ、まあそれはな。それも分かってるよ」

翔太は佳織をなだめるように言うと、再び大輝へ目を向けた。

「お母さんが心配してることも分かるよな? 次からはお金は貸さないようにしよう。もしお金を貸さなきゃいけないときがあったら、貸したお金はあげたものだと思っておくんだ。返してもらえなくても仕方ないって思える相手にだけ貸す」

「ちょっと……!」

「……分かった」

翔太に促され、大輝はうつむいたままうなずくと、自分の部屋に戻っていった。

翔太はこれで話が収まったと思ったのか、満足そうにしていたが、佳織には翔太が大輝を注意したというより、貸した行為をかばって早く話を終わらせたようにしか見えなかった。