妻に無断で動いた家族のお金
「……もしかしてあなた、誰かにお金貸してるの?」
「……え? い、いや、そういうことじゃなくて」
「してないの? してるの? どっち?」
翔太は観念したようにゆっくりと頭を下げた。
「……ごめん。実は大学時代の友達にお金を貸したんだ」
予想していたが、いざ認められると怒りが湧いてきた。佳織は怒りを押し殺しながら質問した。
「いくら?」
「……30万」
「……そんな大金を? 理由は?」
そこで翔太は顔を上げて言い訳をしてきた。
「深く聞いてはいないよ。裕久が泣きついてきたんだ。でもボーナスが入ったら返済できるって言ってくれてるから大丈夫だよ」
裕久という名前は佳織も聞き覚えがあった。今は遠方で仕事をしていて、長期休暇の際には会って遊ぶ仲の友人だった。
「じゃあ貸したのは最近ってことね……⁉」
「あ、ああ。でも大丈夫。ちゃんと返してもらうからさ」
「本当にちゃんと返してもらえるんでしょうね……⁉ ボーナスはもうとっくに振り込まれてると思うんだけど……⁉」
苛立ちから佳織は翔太を叱った。
「大丈夫だよ。裕久は約束を破るようなやつじゃないからさ。それに、あいつが言ってたのは冬のボーナスのほうだから、大丈夫だって……」
翔太は根拠のない理由で「返済される」と言い続けた。そんな翔太の考えの甘さに佳織は頭が痛くなった。
●小学1年生の息子・大輝が友達に500円を貸したことをきっかけに、夫・翔太と金銭感覚を巡って対立した佳織。貸し借りを不自然に擁護する翔太を問い詰めると、妻に無断で大学時代の友人へ30万円を貸していたことが発覚した…… 後編【「約束を破るようなやつじゃない」30万円を貸した夫と500円を貸した息子…善意に対する残酷な末路】にて、詳細をお伝えします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
