<前編のあらすじ>
9歳の娘・莉緒と中学2年生の息子・春樹を育てる望海は、莉緒の小学校でPTA広報を担当している。以前にも同じ役を経験しており、学校行事の取材や広報誌作りにやりがいを感じていた。
ある日の会議で、58世帯がPTA会費の協力を得られていないことが報告された。未納世帯の多くは外国籍の家庭だった。外国籍家庭全体への印象が悪化することを心配した望海は、自ら案内を作ると申し出た。
望海は会費の金額や期限、支払い方法、用途を丁寧にまとめ、PTAの仕組みも分かりやすく説明した。内容が伝われば納付してもらえると自信を持っていたが、配布後に新たに会費を納めたのは、わずか2世帯だけだった。
●前編【「PTA会費が納められていません」未納家庭に判明した共通点…善意で作ったおたよりに返ってきた“残酷な数字”】
娘のプリントにあったヒント
それから数日経ったが、望海は新しいおたよりに取りかかれずにいた。
先日の会議では、内容をもう一度見直して配付することになったものの、前回も金額や期限、会費の使い道はわかりやすく記したつもりだった。これ以上どこを変えれば反応してもらえるのか、望海には見当がつかなかった。
何度かパソコンを開いてみたが、前回の文章を眺めるだけで手は動かず、ただ時間だけが過ぎていた。
そんなモヤモヤした思いを抱えながら、望海は夕食の後片付けをしていた。
すると、そこへ莉緒が近づいてきて、プリントを差し出した。
「これ、授業参観のお知らせ。明日までに出すんだって」
望海はタオルで手を拭きながら顔をしかめた。
「明日までってことは、もっと前にプリントは配られてたんでしょ?」
「ごめん、渡すの忘れてた」
「まったく……」
望海はあきれながらプリントを受け取った。そこには開催日や時間、持ち物などが明記されていた。
内容を確認しているうちに、望海はふとあることに気がついた。開催日時や提出期限といった重要な箇所の下には小さく英語が添えられている。すべての文章に英語があるわけではない。それでも、いつ、どこで何があり、いつまでに返事をしなければならないかは、英語の部分だけを読んでもしっかりと伝わるようになっている。
これまでも学校側からプリントを受け取っていたが、こんな表記があったかどうか、記憶になかった。
「ねえ、莉緒、この英語のやつって前から書いてあったっけ?」
望海がプリントを見せながら聞くと、莉緒はすぐにうなずいた。
「うん。先生が、みんなが日本語がわかるわけじゃないからって」
莉緒の言葉に望海は衝撃を受けた。どうやら自分が気づいてなかっただけのようだった。
