<前編のあらすじ>

62歳の篠田政孝は、埼玉県南部のA市で米問屋を営んでいる。

生まれも育ちもA市とあって、地域社会のリーダー役を務めることも多かった。特に、毎年夏に2日間開催される恒例の盆踊りでは、長年実行委員長を務めてきた。

人と関わるのが好きで、伝統文化を重んじる政孝にとって、ライフワークとも言える仕事だった。

一方、A市は人口が増えており、新たに流入してきた若い住民の中には、盆踊りをはじめとする伝統行事への参加を負担に感じる人も多かった。

中には、行事の開催自体に反対する住民もいて、実行委員長の篠田政孝は、クレーム対応に追われることが増えていたのだった。

今年の盆踊り初日には、「盆踊りの音がうるさい、業務妨害だ」というクレームがあり、政孝が対応に駆けずり回ることに。

さらにトラブルは盆踊り2日目にも発生したのだった……。

●前編:【「盆踊りの音がうるさい」のクレームで大混乱…実行委員長の62歳男性がブチ切れた「身勝手なクレーマー」の正体】

「今日は何もなさそうだな……」

埼玉県A市郊外の盆踊りは2夜連続で開催されるのが通例だった。

その年は、8月上旬の金・土の2日間を予定していた。

初日に「盆踊りがうるさい」というクレームがあったが、2日目も予定通り盆踊りを開催する方針だった。

「では、皆様、ごゆっくりお楽しみください」

実行委員長の政孝が盆踊り2日目の開会の言葉を告げると、盆踊りの曲が流れだした。あわせて、太鼓や鳴り物も威勢よく響きわたる。

集まった浴衣姿の参加者は、中央のやぐらの周りで輪になり、曲にあわせて踊りはじめる。

「昨日は大変だったが、今日は何もなさそうだな……」

実行委員のテントの中で、様子を見ていた政孝は、何もなさそうだと見てとり、一人安心していたのだった。

だが、その後、事件が発生した……。