<前編のあらすじ>
共働きの実花は、仕事を終えて帰宅した後も、多くの家事を担っていた。夫・拓哉は頼めば手伝うものの、自分から動くことは少ない。実花も頼むより自分で済ませたほうが早いと考え、約2年半、不満を口にせず過ごしてきた。
ある夜、ドラマを見ていると、厨房で皿を洗う主人公を見た拓哉が「いくら金もらっても、こんなふうに毎日皿洗いするなんて絶対嫌だな」と漏らす。その一言を聞いた実花は、これまで抑えてきた思いをぶつけた。
「言ってくれればやった」と答える拓哉に、実花は指示を出す役目まで自分が担うことへの不満を訴える。初めて妻の本音を知った拓哉は謝罪し、今後は皿洗いや洗濯を自分も担当して、家事をきちんと分担すると約束する。
●前編【「金もらっても皿洗いは絶対嫌」夫の失言に妻ブチ切れ…「言えばやったのに」と悪気なく返す夫に妻が放った“痛烈な一言”】
夫婦の家事分担がスタート
夕食を終えた拓哉は、実花が皿に手を伸ばすより先に立ち上がった。
「俺が洗うよ」
「ほんと?」
「分担するって約束だから」
拓哉は2人分の食器を重ねてキッチンへ運んでいく。その背中を見ながら、実花はつい嬉しくなった。勢い任せに言っただけではなく、きちんと約束を覚えてくれている。しばらくすると、水音が止まった。
「終わったよ」
満足そうに戻ってきた拓哉に礼を言い、実花はお茶を淹れようとキッチンへ向かった。食器はきれいに洗われ、水切りかごに並んでいる。しかし、シンクの縁から調理台まで水滴が飛び散り、ゴミ受けには野菜くずや食べ残しが溜まったままだった。
「……ああ」
思わず声が漏れた。初めてなのだから、仕方がない。せっかくやってくれたのに、細かいことまで口を出したら嫌になるかもしれない。実花は黙って布巾で水滴を拭き、ゴミ受けの中身を捨てた。
数日後には、拓哉が夕食作りを引き受けた。
「今日は俺が作るよ」
「じゃあ、お願いしようかな」
出てきたのは豚肉と野菜の炒め物だった。見た目は少し豪快だったが、味は悪くない。
「おいしいじゃん」
「だろ?」
拓哉は嬉しそうに箸を進めた。
「俺って、料理向いてるかも」
「1回うまくいっただけで調子に乗らないの」
実花は思わず笑い、2人は楽しい食事の時間を過ごした。
ところが食後、キッチンへ水を取りに行くと、コンロには油が飛び散り、調理台には切った野菜のかけらが残っていた。使った調味料も出しっぱなしだ。
リビングから拓哉の声が飛んでくる。
「次は何作ろうかな。チャーハンとかいけそうじゃない?」
「……そうだね」
実花は返事をしながら、キッチンペーパーでコンロを拭いた。
