診療費を機に変わった夫の意識

病院で診察を受けてから、日を追うごとにナギは回復していき、1週間も経つと完全に元気を取り戻した。部屋中を走り回ったり、稜人にじゃれついたりしている様子を見ると、茉莉は本当にうれしかった。

そんなある日の夜、夕食後に茉莉がリビングでスマホを見ながらくつろいでいると、稜人が真面目な顔で声をかけてきた。

「茉莉、ちょっと話があるんだけど」

「え? 何?」

真剣な表情をする稜人に茉莉は目を向けた。

「俺さ、これからは小遣い制にしようかなと思ってる。それで茉莉がよければ、俺の口座の管理もお願いしたいんだ」

「……え? どうしたのよ?」

稜人の提案に茉莉は驚いて聞き返した。

「いや、やっぱりいざってときのために貯金をしたほうがいいと思って。俺はそこらへんだらしないから。実際、茉莉に貯金したほうがいいって言われてちょっとずつ意識してたんだ。俺はすぐにほしいものがあったら買っちゃうし、我慢ができないから、小遣い制にしてもらったら衝動的に買っちゃうってこともなくなると思うんだ」

「……いいの? 好きなように買い物とかできなくなるよ?」

茉莉の質問に稜人はナギを見て答えた。

「ナギの診察代を聞かされてさ、少し考えたんだよ。将来、もしものことがあったとき、助けてくれるのはお金だよなって。もちろんナギだけのためじゃない。俺たちの将来のためにも、今から貯金をしておいたほうがいいって本気で思ったんだよ」

稜人の言葉に茉莉は思わず頬が緩んだ。

「……そう言ってくれるととてもうれしいよ。もちろん貯金には私も協力するからね」

茉莉がそう言うと稜人はしっかりとうなずいた。

「ありがとう。これからもいろいろとあると思うけど、2人で頑張っていこう」

「そうね。まあでも、どんなことがあっても2人で力を合わせたら、何とかなるでしょ」

自分の口癖をまねられた稜人はおかしそうに笑っていた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。