茉莉は完成したカレーをダイニングテーブルに置くと、リビングのドアを開けて夫の稜人を呼んだ。
「ご飯できたよー」
「分かったー、今行くー」
結婚と同時に今のマンションに引っ越して3年が経ち、これまでは大きなケンカもなくやってきた。とはいえ、茉莉には稜人に対する大きな不満があった。
浪費癖の夫に不安を抱く茉莉
「ねえ、靴箱に見たことないスニーカーがあったんだけど、また買ったの?」
食事を始めるや、茉莉はカレーを頬張る稜人に尋ねた。指摘された稜人は目を丸くしていた。
「え、なんで分かったの?」
「分かるよ。あんなド派手なの見たことないんだから」
稜人は嬉しそうに頬を緩ませた。
「いやもう一目惚れってやつだよ。ネットで見ててつい欲しくなってさ。気がついたらポチってた」
「いくらしたの?」
「3万くらいだったかな」
稜人は満足そうにうなずきながら答えたが、茉莉はため息をこらえた。
「先月もスニーカー買ってたじゃん。足は2本なんだから、そんなぽんぽん買ったってしょうがないでしょ?」
「ごめんごめん。でもさ、こういうのって出会ったらしょうがないんだよ」
稜人は満面の笑みを浮かべて答えた。
彼は不動産会社の営業職をしていて、茉莉は食品メーカーで営業事務として働いている。経済的に大きな余裕があるわけではなかったが、家賃や生活費は毎月決まった額で出し合うことで問題なく生活できていたし、それぞれが自由に管理できるお金もあった。だから稜人が自分の給料で何を買おうが、強く口出しするつもりはない。けれど、20代後半の茉莉は、いつか子どもだってほしいと思っている。そんな先のことを考えると、目の前のスニーカーに飛びついて数万円を簡単に使ってしまう稜人のことが不安でならなかった。将来のために貯金しようと何度も稜人に話していたが、稜人の浪費癖がよくなる気配はなかった。
