勢いで猫を飼いたがる稜人

「ねえ、かわいくない? 子猫だよ」

と稜人が小さな猫の写真をスマホで見せてきたのは、唐突だった。

「これさ、課長の家で飼ってた猫が産んだんだって。引き取ってくれる人を探してるらしくてさ。だからうちで飼わない?」

「は? 何言ってんの?」

軽い口調で言ってくる稜人に茉莉は呆れながら聞き返した。

「課長から写真とか動画を見せられて、あんまりにもかわいくてさ。仕事で疲れて帰ってきたらこの子がいるんだぜ? 最高だと思わない?」

「……それはそうかもしれないけどさ」

頭ごなしに否定はできなかった。茉莉も猫は好きだった。

「でもいきなり猫なんて飼えるの? 稜人って動物飼ったことあったっけ?」

「いやないよ。でも俺たち2人で力を合わせれば何とかなるって」

またか、と茉莉は思った。「何とかなる」は何かにつけて稜人が言う口癖だった。しかし、今回ばかりはそういうわけにもいかない。

「何とかなる、じゃダメだよ。生き物なんだよ……?」

「困ったことがあったらネットで調べたりとか、課長に俺が聞いたりするから大丈夫だって。それよりもこの子との生活を想像してみろよ。絶対楽しくなるからさ」

スマホ画面にはおもちゃで遊ぶ子猫の動画が再生されていた。そのかわいらしさに茉莉は思わず笑ってしまう。

「ほらね。茉莉だって飼いたいって思ったでしょ? それじゃもう課長にはぜひ引き取りたいって連絡するからね」

そう言うと、稜人はスマホを操作し始めた。

強く止めることはできたが、茉莉はしなかった。稜人の言うとおり、家にかわいい猫がいる生活は楽しそうだなと思ったからだ。

「言っておくけど、2人で力を合わせてやるんだからね。それは約束よ」

「当たり前だろ〜」

稜人は鼻歌交じりでスマホを操作しながら答えた。