「低層階の住人は学歴コンプレックスの持ち主!」

その翌朝。会社に出社するため、長女・友梨と妻・円佳が玄関を出ようとするその時だった。

「うわ、何これ、ひどい……」

円佳がそう言って絶句し、玄関先で呆然と立ち尽くす。長女・友梨は心配そうに母親の顔を見上げている。

「なんだ、どうかしたのか?」

異変を察知した下村弘和が玄関先へ行くと、円佳は無言で外を指し示した。

「ん?」

下村弘和が見ると、玄関の外に、段ボールが広げられ、ガムテープのようなもので床に貼り付けてあった。

その段ボールに、真っ赤なマジックで、次のような文字が書かれていた。

 

「低層階の住人は学歴コンプレックスの持ち主!」

「子どもに学歴コンプレックスを植え付けるな!!」

 

「な、なんじゃこりゃ……」

下村弘和もさすがに絶句するほかなかった。書かれていた攻撃的な文言にもショックを受けたが、この段ボールが一晩中ここに広げてあったかもしれないという事実がより弘和を打ちのめした。

「廊下を通った人はみんな見ただろうな、これ……」

気づいたのなら剝がしてくれればいいのにと思いつつ、下村弘和はマンション内で自分の悪い噂が広がるかもしれないと懸念していた。

「一体、誰がこんなことを……」

弘和はそう自問自答したが、すぐに馬鹿げたことだと思い直した。

こんなことをする相手は一人しか想像できなかったからだ。