<前編のあらすじ>

40歳で念願のスポーツバーを開いた慶介は、ワールドカップ開幕をきっかけに店が連日満席となり、夢が現実になっていく手応えを感じていた。地元客や外国人客まで集まり、店内が一体になって盛り上がる光景に、慶介は大きな充実感を覚えていた。

しかし、営業後に外へ出ると、喫煙スペース周辺には吸い殻やゴミが散乱していた。さらに向かいの和食店主・坂本から、自分の店の前にも同じようなゴミが捨てられていると厳しく責められ、「このままなら出るとこ出る」とまで言い渡される。

慶介は謝罪しながらも、路上のゴミまで自分の責任だと決めつけられることに強い理不尽さを覚える。客が勝手に騒いでいるだけだという思いもあり、ついには坂本に感情的に言い返してしまうのだった。

●前編【サッカーW杯で連日満席のスポーツバー店主にまさかの暗雲…夜明けの店先で勃発した“隣人との壮絶バトル”

店主を襲う後悔

慶介が目を覚ますと13時を過ぎていた。

結局店の前の掃除などをして家に帰ってきたのは9時を過ぎてからで、そのまま気を失うように寝てしまっていた。

洗面台に顔を洗いに向かう途中で、坂本の「出るとこ出る」という脅しの文句がよみがえってきた。まるですべての責任がこちらにあると決めつけられたような言い方だった。

「こっちだってやれることはやってるんだよ……」

そうつぶやきながら、慶介は食事の準備を始めた。冷蔵庫から作り置きの惣菜を出し、味噌汁を温めた。だが箸を持っても食事をする気にはなれなかった。

店の前は確かに汚れていた。そして坂本の店の前にまでゴミが落ちていたのも事実だった。もちろんすべてが自分の店の客だという証拠はない。深夜も営業している店というのは慶介のバーだけではなかった。ただ坂本の店は真向かいに位置していて、関係ないとも言い切ることはできない。

もし本当に坂本が行政などに訴えたらどうなるのだろうか。慶介はスマホを手に取り、飲食店の騒音やゴミのトラブルに関して調べ始めた。訴えられても問題ないという証拠がほしかった。しかし調べていくうちに自分が間違っていたことを思い知らされた。

深夜に大声で騒いだり、店の周りに散らばったゴミに関することは店の責任を問われることがあるらしい。坂本が本当に行政や警察に相談すれば最悪の場合、営業停止の対象になることもあるそうだ。