決勝戦の意外な再会

それから2週間が過ぎ、ワールドカップは決勝戦の日を迎えた。店は当然繁盛し、連日の大盛況だ。

午前3時を回り、いよいよ決勝戦のキックオフが近づいてきたとき、店の扉が開いた。

入ってきたのは坂本だった。さらにその横には坂本の店で見かけたことがある若い従業員の姿もあった。

「2人入れるか?」

坂本はぶっきらぼうに言う。

「あ、は、はい、どうぞ」

驚きながらも慶介は何とか返した。カウンターに座ると坂本はすぐに口を開いた。

「明日は店休日でな。決勝くらいは見ようと思ってたんだが、こんな時間に家でテレビを見てると女房に怒られるからここに来たんだ」

坂本が早口で説明したあと、若い従業員がおかしそうに笑った。

「坂本さんね、ここ最近、ずっと店長のこと褒めてたんですよ。ちゃんと約束を守ってるしっかりしたヤツだって。今日も、行くぞって前のめりに誘ってくれたんです」

「え……」

従業員の言葉に慶介は目を丸くした。坂本はじろりと従業員をにらんだ。

「余計なことを言わなくていいんだよ、おめえは」

慶介は胸が熱くなるのを感じながら、坂本に頭を下げた。

「ありがとうございます。今日は楽しんでいってください」

坂本は照れくさそうに笑ってうなずいた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。