<前編のあらすじ>
仕事で多忙な40歳の伸也は、久しぶりに父親らしいことをしたいと思い、妻・真希と8歳の長男・峻也、6歳の長女・絵梨香を海へ連れて行く。峻也は大はしゃぎする一方で、絵梨香は表情に乏しく、本当に海を楽しみにしているのか伸也には分からないままだった。
海辺に着くと、真希は荷物番としてレジャーシートに残り、伸也は子どもたちと波打ち際へ向かう。波を怖がる砂浜に座り込んでしまった絵梨香を置いて、伸也は息子にせがまれるまま、海へ入って遊び始めた。
しばらくして絵梨香の様子が気になった伸也が砂浜を見ると、娘の姿は消えていた。そこに残されていたのは、絵梨香が描いたカニの絵だけ。伸也は一気に血の気が引き、最悪の事態を想像し始める。
●前編〔「姿がどこにも見えない」家族団らんの海水浴の最中、6歳長女を見失った家族の悲劇〕
消えた娘を探す父
伸也は峻也を連れて急いで真希の下に戻った。真希はレジャーシートに座り、横になっていた。伸也は辺りを見渡した。
「あれ、どうかしたの?」
「絵梨香、戻ってきてるか?」
伸也がそう尋ねると真希はきょとんとした顔で返してきた。
「え? 一緒じゃないの?」
真希の言葉に胸の心拍数がまた上がった。
「さっきまで砂浜で絵を描いていたんだ。でもちょっと目を離したらいなくなってて。真希は絵梨香の姿は見えてなかったのか?」
「ごめん、他にもお客さんが多くてこっちからは皆のことを見られなかったんだ。だからちょっと横になってたんだけど……」
真希は話しながら目で近くをキョロキョロと見ていた。
「そうか、分かった……。それじゃ俺がちょっと絵梨香を探してくるよ」
すると真希は立ち上がった。
「分かった。私も一緒に行く」
「いや真希はここで荷物番と峻也のことを見ておいてくれないか? もしかしたら絵梨香がこっちに戻ってくる可能性があるから」
伸也がそう言うと真希は真面目な表情でうなずいた。
「分かった。峻也、こっちに来なさい」
峻也も緊急事態だと理解しているのか大人しく言うことを聞いてくれた。
それから伸也は2人から離れて絵梨香を探した。絵梨香が絵を描いていた砂浜に戻り、周辺に目を向けた。絵梨香が描いたカニの絵は波に消されてしまっており、それがなんだか不吉な予兆のように思えてしまう。
