父が知った娘の世界

それから伸也はライフセーバーたちに頭を下げた。

「本当にありがとうございました」

ライフセーバーは伸也の言葉に穏やかな表情で返した。

「無事で何よりです。でも岩場は滑りやすいから必ず大人と一緒に来て下さいね」

ライフセーバーの言葉に少し落ち着いた絵梨香は何度もうなずいた。

「あの、警察にも連絡をしてもらってますよね? 捜索の費用はどうやってお支払いをすれば……?」

伸也の質問にライフセーバーは落ち着いた声で答えた。

「公的機関による捜索については基本的に費用を請求することはありません」

「……そうなんですか?」

「はい、ですのでお気になさらず、ご家族のところに戻って安心させてあげて下さい」

ほっとした反面、今回の騒動でたくさんの人に迷惑をかけ、時間とお金を使わせてしまったことに変わりはなかった。伸也はもう一度深く頭を下げて、絵梨香を連れて真希の下に帰った。

連絡はしておいたが、本当に絵梨香が戻ってきたことに真希は涙を流して安心していた。そして絵梨香も再び、泣きながら真希に謝っていた。その後は海の家で焼きそばやフランクフルトなどを買って一緒に食べて帰ることになった。車へ向かっている道中、伸也は絵梨香の手を握っていた。

「絵梨香はカニが好きなんだな」

そう言うと絵梨香は少し照れくさそうにうなずいた。今日だけで絵梨香のいろいろな表情を見ることができたなと思い、次はどこに行こうかと伸也は考えた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。