楓は6歳になる息子の竜星と近所のショッピングモールに出かけていた。夫の洋介や同居している義母の芙美子は用事があって家を空けているので2人だったが、竜星が気に入っていることもあり、休みになると買い物がてら訪れるのが定番だった。

とはいえ、今日はキッズスペースで遊ばずに向かわなければいけない場所があった。

「わぁ、すごい。絵の具のパレットみたいね」

2階に特設されたランドセル売り場で、楓は思わず感嘆を漏らす。

赤が大好きな息子

楓が子どものころは女の子なら赤、男の子なら黒と決まっていたからランドセルの色を選ぶ余地なんてなかった。けれど最近の小学生はカラフルなランドセルを背負っている。だから買うにしてもその前に、4月から小学生になる竜星にも自分が6年間使うランドセルの色を選んでもらわなければいけなかった。

楓はとなりでぽかんとしている竜星に声をかける。

「竜星、この中から好きなのを選んでみて。6年間使うものだからよく見て決めるのよ」

「はーい」

わかっているのかわかっていないのか、間の抜けた声で返事をした竜星は色とりどりのランドセルの中からすぐにひとつを指さした。

「これがいい!」

「本当に……?」

「うん!」

ある程度予想はしていたが、竜星が選んだランドセルは赤い色だった。

戦隊ヒーローが大好きだった竜星は、一番目立つリーダー格のレッドにならい、赤が一番好きな色だった。Tシャツも赤、スニーカーも赤。しまいには楓の赤い口紅を顔中に塗りたくっていたこともある。好きなものを好きだと言えるのはいいことだ。けれどランドセルとなると少し話が変わってくる。

「他のはどう? ほら、水色とか青とかも素敵じゃない? あ、茶色なんかも落ち着いててかっこいいよ?」

楓は手あたり次第に他の色のランドセルを勧めてみた。けれど、どれを勧めても竜星の反応は変わらなかった