夫と義母に打ち明けたランドセル問題

夕食をリビングでとったあと、竜星が自分の部屋に行ったのを見計らって楓はランドセルの件を洋介に話した。

「今日さ、竜星にランドセル、どれが欲しいかきいたの。そしたら赤がいいって言っててね」

「まあな。あいつは赤が好きだから」

洋介は当たり前のようにうなずき、ビールを口に付けた。すんなりと受け入れる洋介に楓は面食らう。

「ちょっと待ってよ。さすがに赤はまずいって思わないの? あれは女の子が使うものでしょ?」

「いやぁ、今はもうそんな時代じゃないだろ」

洋介は軽い調子で言って首をかしげた。言いたいことはわかる。楓自身、好きな色にすべきだとも思う。けれどどうしてよりによって赤なんだ。

するとお手洗いから戻ってきた芙美子が、楓の剣呑な空気を感じ取ったのか、声をかけてきた。

「どうかしたの?」

「それが、今日竜星のランドセルを見に行ったんですけど、竜星が赤がいいって言ってるんです」

「へえ、そうなの。まぁ、いいじゃない」

芙美子も受け入れたことに楓は驚きを覚えた。

「楓は赤いランドセルは女の子が使うもんじゃないかって気にしてるみたいなんだ」

「……まぁ、昔はそうだったけどねぇ、そんなのもう昔の感覚なんでしょう? 今の子たちは本当にいろんな色のランドセルを背負ってるわよね。この前なんて黒と青の2色を使ったランドセルを背負ってる子もいたわよ。男の子が赤を背負っていたって、別に変じゃないでしょう」

楓は芙美子の言葉にうなずいた。変じゃない。変じゃないのだが……。

「も、もちろんそういうオリジナリティのあるランドセルを使うことはいいと思ってるんですよ。でもわざわざ赤なんて選ばなくてもいいじゃないですか」

「だからって親が強引に選ぶっていうのもねぇ。私は竜星には好きなランドセルを使ってもらいたいわ」

そんなのは楓だって同じだった。けれどまるで違う国の言葉を話しているように、自分の気持ちが伝わってないような気がした。