<前編のあらすじ>
律子は母からもらったネックレスが見つからず焦っていた。学生時代、大学進学で家を出る際にお守り代わりにもらった大切な宝物だ。
ネックレスを探し続けたが見つからず、夫・琢也に聞いても知らないと言われる。
ある日、琢也が財布を忘れたため届けることに。偶然財布から落ちたのは質入証券で、そこにはネックレスと金額が記されていた。夫が勝手に質に入れたという疑惑に胸がざわつく律子だった。
●前編【母からもらった宝物のネックレスが消えた…円満だと信じて疑わなかった夫の財布から発見された「1枚の証券」】
夫を問い詰める決意
律子は身の入らない状態で仕事をし、家に帰り琢也の帰宅を待った。
仕事から帰ってきた琢也を迎えたあと、息子の博樹は塾に行っているので2人で晩ご飯を食べる。
今話すしかないと律子は思った。もし勝手に質に入れていたなんて話を息子に聞かせるわけにはいかない。しかしこの話題を出すことの怖さがあった。
律子はゆっくりと息を吐く。だとしてもこのまま放置なんてしてはおけない。やったことは事実なら許されることじゃないし、なぜこんなことをやったのかを知りたかった。
「ねえ、ちょっとこれを見てほしいんだけど」
そう言って律子は携帯の画像を見せる。そこには今朝撮った証券が写っていた。画像を見た琢也が無表情のまま固まった。
「私がネックレスをなくしたって言ってたよね。そのときは知らないって言ってたけどこれは何? もしかしてネックレスを勝手に質に入れたの?」
琢也は律子に鋭い目線を向けた。
「勝手に人の財布を見たのか……⁉」
内心、呆れてしまった。またこれだ。
何か自分が追い込まれたり、非があるところを責められたら、いつも他のところをあら探ししてこちらを責めてくる。
律子が唯一琢也に対して持っている不満だが、今日はいつもの数倍も怒りを覚えた。
「それは今はいいでしょ……! それよりもこの証券は何なのか説明してよ」
「勝手に人の財布を見やがって……! 親しき仲にもプライバシーってもんがあるだろ……⁉」
「財布からこれが落ちたから、拾ったときに見えたのよ! これでいいでしょ! 次はあなたが答える番よ! この証券は何か説明して!」
律子は声を荒げた。
