律子は腕時計で時間を確認する。5分後には家を出た方がいい。同窓会会場近くに止まるバスの時間に間に合わなくなってしまう。

しかし律子は家を出られずにいた。理由はつけようと思っていたゴールドのネックレスが見つからないからだ。

母からもらった大切な宝物

ネックレスは、学生時代に母からもらってそれ以来ずっと大事にしている宝物だ。決して裕福な家庭ではなかった。それでも律子の大学進学が決まり、家を出るとなったとき、お守り代わりと言ってくれたのがネックレスだった。

派手だよと笑ったが心から嬉しかったのを今でも覚えている。

けれどそれ以来、あのネックレスを律子は大事なときには必ずつけるようにしていた。

だから今日の同窓会にも必ずつけていこうと決めていた。しかしいつも入れていたケースが見当たらなかった。ケースごと落としたのかもしれないと思って部屋中を捜索する。

しかしどこにも見当たらない。そうこうしているうちにタイムリミットが近づいてくる。

遅刻するわけにはいかなかったので、ネックレスに関しては帰ってきてからもう一度探そうと心に決めて、律子は家を出た。

外でなくすことは考えられない。確実に家にあるはずだ。

そう何度も言い聞かせるように思ったが、胸に巣食う不安はぬぐえなかった。