開き直る夫への失望

琢也は舌打ちをして答える。

「……ああそうだよ。ちょっと出費が多くて困ってたんだ。それで金がなくなったからしょうがなくだよ」

「はぁ? 何それ? 出費が多いって何よ?」

「結婚式の祝儀とか飲み会の金を出したりするのが重なったんだよ! それでちょっと金が必要になったから借りただけだよ」

律子は琢也をにらみつける。

「そんなことなら私に言えばいいでしょ⁉ どうしてこんな盗むような真似をするのよ⁉」

「しょうがねえだろ! 金がねえってお前はいっつも愚痴ってんだからよ! そのせいで小遣いだって減らされて……!」

琢也は苛立ったように答える。

「ふざけないでよ……! 将来のために節約しようって言い出したのは琢也でしょ⁉ 小遣いを減らすとか言い出したのもあなたよ! 私は無理しないでって言ったわ! それなのになんで全部私のせいになってるのよ⁉」

「俺が言わなきゃ誰が言うんだよ⁉ 節約は必要だっただろ! だから俺が率先して提案をしてやっただけなのに、お前はいつもそうやって全責任を俺に押しつけて……!」

律子は怒りで震えた。

先ほどからずっと琢也は子どもじみた責任転嫁でこの場を逃れようとしていた。

「あんたが言ってることが全部正しかったとしても、人のものを盗むなんてあり得ない。時計もなくなってたけどあんたがやったんでしょ?」

「……盗んだわけじゃねえって。質に入れたってだけだろ。期限内に金を返せばそのまま戻ってくるんだから」

「給料日まであと10日もあるのよ⁉ 期限は大丈夫なの⁉」

琢也は盛大にため息をはく。

「3カ月は期限があるんだから問題ねえって。こっちはちゃんと引き取るつもりで質入れをしてんだ。……ていうかあんな安物でギャーギャー騒ぐなよ」

琢也はそう言うと呆れた顔をして部屋を出て行ってしまった。