<前編のあらすじ>
4月1日の深夜、誠也は妻の瑞穂に「宝くじの二等1000万円が当たった」と告げた。当選番号の画面まで用意した周到な演出に、瑞穂は疑うことなく大喜びし、2人は当選金の使い道や銀行に行く計画を話し合った。
しかしこれはエイプリルフールの嘘だった。宝くじを馬鹿にしていた瑞穂への軽い仕返しのつもりで、誠也は翌日の夕食時にネタばらしをするつもりでいた。
ところが翌日、帰宅した瑞穂の手には15万円分のブランド品の紙袋があった。さらに寿司のデリバリーやゴールデンウィークのハワイ旅行まで提案する瑞穂を前に、誠也は嘘を打ち明けるきっかけを完全に失ってしまった。
●前編【「ついに二等が当たったんだ!」宝くじ当選を大喜びした妻…夫の仕掛けた罠は想定外の展開へ】
動揺を隠しながらの夕飯
誠也は動揺を見せないように瑞穂に声をかけた。
「……ま、まあとりあえず夕飯を食べよう。旅行とかそういうのはその後からでもいいだろ?」
誠也がそう言うと瑞穂は素直にうなずいてくれた。
「確かに、ちょっと焦りすぎてたわ。まだ1カ月もあるしね。それじゃ夕飯はお寿司でも頼もうか」
「いや、昨日のカレーが余ってたからあれがいいかな。1日寝かしたカレーって何ものにも代えがたいうまさがあるから」
「ええ、カレーでいいの?」
少し不満そうな瑞穂に誠也は説得を試みた。
「昨日のカレーがうまかったからまた食べたいんだよ。寿司はまた今度ってことで」
料理を褒められたことで瑞穂は納得して受け入れてくれた。
「分かったわよ。じゃあ先にカレーを温めておいてくれる? 私は部屋着に着替えてくるから」
そう言って瑞穂はリビングを出て行った。残された誠也は頭を抱えた。
まさかこんなことになるとは思っていなかった。瑞穂は想定以上に宝くじが当たったことを喜んでいる。そこまで高価なものに興味があるタイプだとは思っていなかったが、内心はほしいと思っていたのだろう。我慢していたフタが今回のことで開いてしまっていた。しかしもしこれで嘘だったと分かったら、悲しませてしまうし、怒られてしまう。
ただ黙って過ごせるわけもない。なぜなら1000万なんて当たってないのだから。瑞穂が買った15万ものブランド品はすでに家計を直撃している。
言い出すにしてもどうやって穏便に伝えるのか、その方法を誠也はカレーを温めながら考えていた。
