瑞穂の怒りと誠也の償い

「とりあえず顔上げて」

言われた通りゆっくりと顔を上げると、眉間に深いしわの入った瑞穂の表情があった。

「何それ……⁉ 何でそんなことをしたの……⁉」

「いやいつも宝くじなんて当たらないって言われてたから当たったって言ったらどんな反応するかなって思って……」

「そんなの喜ぶに決まってるでしょ⁉ そんな私の反応を見てバカにして笑ってたってこと⁉」

誠也は慌てて補足する。

「あ、あと、宝くじが当たったときの喜びみたいなものも味わってほしくて……」

「そんなぬか喜びなんて何も嬉しくないわよ!」

瑞穂に怒られて誠也はもう一度頭を下げた。

「……ごめん」

「言っていい嘘とダメな嘘があるでしょ……⁉ 30過ぎててそんなことも分からないの……⁉」

「……ごめん」

瑞穂は何かに気付いて天を仰いだ。

「うわ、最悪……。服、どうしよう……? 返品とかできるのかな……」

「あ、いや、あれは俺が買ったってことにする。それはさせてくれ」

「あなたが払ったとしても、結局私たちのお金がなくなるっていうのは変わらないでしょ」

少し怒りながら話す瑞穂に誠也は説明をした。

「俺の小遣いを減らしてくれ。それで分割で払ったってことにしてくれれば……」

誠也の話を聞いて、瑞穂は考えてこちらをちらりと見てきた。

「いいの?」

「もちろんだ。全部俺が嘘をついたのが原因だから。それと旅行にも絶対に行こう。2人で。ハワイはさすがに難しいけど国内旅行だったらゴールデンウィークに行けると思うから」

瑞穂は誠也の言葉に唇をとがらせつつ、うなずいた。

「……まああなたがいいなら」

「本当にごめんな」

「……もう2度とこんな嘘はつかないでよね?」

瑞穂に釘を刺されて誠也はうなずき、心から嘘をつかないと誓った。

「じゃあどこの旅館に行くか私が決めていい?」

「ああ。もちろん」

そうして瑞穂は携帯で旅館を調べ始めた。少しだけだが機嫌を直してくれたことに誠也は胸をなで下ろした。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。