<前編のあらすじ>

転居を機に生活を整え直したいと考えた佐奈は、約10年暮らした部屋を離れ、新居で荷解きに追われていた。

そんな時に届いた、前マンションオーナーの北山からのメールには、床材全面張替えやクリーニング追加費用など合計25万円もの修繕費が記載されていた。退去の立ち合い時には何も指摘されなかっただけに、佐奈は納得がいかない。

意を決して北山に電話をかけるが、北山は請求は妥当だと言い切り、こちらの話に耳を貸そうとしない。さらに「木曜の夕方6時に部屋へ来てほしい」と一方的に日程を決められ、佐奈は反論する間もなく電話を切られてしまった。

●前編【「この金額、ほんとに合ってるの?」退去後に受け取った容赦ない請求書…修繕費25万円の衝撃

心強い味方との再会

翌日の夕方、佐奈は駅前のカフェの窓際に座り、冷めかけたカフェラテを前にため息をついていた。1人でいると昨日の電話がよみがえってきて、まるで気分が落ち着かない。

「久しぶり、小園。待った?」

声をかけられて顔を上げると、ビジネスリュックを背負った山本が立っていた。大学時代、サークルで仲良くなった友人だ。今回の件を誰かに相談したいと思ったとき、最初に思い浮かんだのが、法学部出身で、現在不動産会社に勤めている山本だった。

「ううん、今来たとこ。ごめんね、急に呼び出して」

「いいって。フットワーク軽いのが俺の長所だから。とりあえず見せてくれる?」

席に着くなりそう言われて、佐奈は苦笑しながらスマホを差し出した。北山からのメールを見せ、昨日のやり取りをかいつまんで話す。口にしていくうちに、自分の中でも整理しきれていなかった戸惑いが、少しずつ輪郭を持ちはじめた。

「退去の立ち合いは終わってるんだよね」

「うん。そのときは特に何も言われなくて」

「で、そのあとでオーナーから直接このメールか」

山本は画面を見ながら眉を寄せた。

「床全面張替えって、ずいぶん大きく出たな」

「やっぱり変?」

「少なくとも、普通に住んで付く傷までまとめて借主負担みたいに言うのは雑だね」

その一言で、佐奈の肩から少しだけ力が抜けた。