最悪の想像の先に

「絵梨香……」

もっとちゃんと見てあげていればという後悔が押し寄せてきたときだった。お父さん、と大声で伸也を呼びながら、さっきのライフセーバーが駆け寄ってきた。

「お子さんが見つかりました」

その言葉を聞いた瞬間、伸也は息をするのを忘れた。

「岩場のほうにいたみたいです。怪我はありません」

伸也はライフセーバーの青年とともに事務所へ向かった。

「絵梨香!」

伸也が叫ぶと絵梨香がびっくりしたようにこちらへ目を向けた。伸也は絵梨香を抱きしめる。絵梨香の温かさを感じると涙がこぼれ落ちた。

「お父さん、何? どうかしたの?」

「動いちゃだめって言っただろ」

「カニさんを見てたの」

「は? カニさん?」

「カニさんを描いてたら、本当のカニさんがいたからそれを追っかけてここにいたの」

「ちょうどあの岩場は海辺からの死角になってますから、それで見つけられなかったんでしょうね」

ライフセーバーは笑顔でそう説明をした。伸也は絵梨香の両肩に手を置いた。

「そうか。でもな絵梨香、勝手にいなくなったらダメだろ。みんな、絵梨香がいなくなって心配してたんだ」

「ご、ごめんなさい。初めて海に来たからそれで楽しくて……」

そう言うと絵梨香は泣き出してしまった。

「た、楽しかったのか? 海が嫌いじゃなかったのか?」

絵梨香は泣きながら首を横に振った。伸也はもう一度、絵梨香の小さな体をぎゅっと抱きしめた。