<前編のまとめ>
「人材派遣会社に入社して無期雇用契約を結べば、正社員でいながら、会社に縛られずにいろんな現場で経験が積めます」
そんな言葉を信じ、人材派遣会社に入社した川口心音さん(仮名)。
配属先は名の知れた大手不動産会社。ところが実際には、派遣先のルールに従わされ、スキルも人間関係も築けない、孤立した環境が待っていました。
正社員なのに「派遣」として扱われ、マニュアルだけを頼りにひとりで電話に追われる日々。スキルアップとはほど遠く、川口さんが「派遣先を変えてほしい」と営業担当者に伝えたところ、派遣元に相談内容が漏れてしまいました。
●前編:「キャリアの第一歩として理想的かも」退職代行利用者数4割を占める業界に新卒入社した女性を待っていた理不尽な現実
正社員なのに「派遣」扱いされる
「派遣だからって、仕事をなめていないか」
ある日、派遣先のマネージャーから怒られました。きっかけは川口さんのミスです。しかし、川口さんはそのことより、派遣扱いされたことがショックでした。
川口さんは、学生時代に「派遣社員では将来が不安定かもしれない」と考え、正社員雇用にこだわって人材派遣会社へ入社しました。しかし、配属先では「派遣」として扱われ、「正社員」という立場が実感できる場面はほとんどありませんでした。
しかも、マネージャー自身も、別の人材派遣会社から派遣されてきていたのです。
同じ会社の社員でもなく、派遣先の正社員でもない人に叱責されたことに、川口さんは「私は正社員なのに」と大きな違和感を覚えたのです。
このとき、退職を決意したといいます。
しかし派遣先に伝えると「そういうことは自分の会社に伝えてください」と言われ、自社では「現場と相談してください」と返されました。両方の間を行ったり来たりするうちに、誰にどう相談すればいいのか、わからなくなってしまったようです。
そこで川口さんは、退職代行サービスの利用を決めました。