情報漏えい対策のため派遣はプリンター禁止
ところが、実際の現場は想像していた環境とはまるで違いました。低層フロアに、川口さんのように派遣されたスタッフが集められ、一日中電話対応に追われます。社内食堂やカフェは使わせてもらえず、大手不動産会社の社員との交流は電話のみで、ミーティングなどにも参加させてもらえません。
「派遣先のリーダーも他の会社から派遣されてきていました。だから、派遣元のルールではなく、リーダーが所属する会社のルールを強制されました。勤務時間はエクセル管理で、朝はどれだけ早く来ても9時出勤。退勤時間も30分未満は切り捨てです」
さらに業務負担も大きかったようです。
「何百ページもあるシステムのマニュアルをPDFで渡されました。PDFは開くのが遅いし、電話対応しながら該当箇所を探すのは大変です。それなのに印刷したいと言ったら、情報漏えい対策のため派遣はプリンターを使えないと断られました。問い合わせのたびに、社員を待たせてしまうので、舌打ちされたことも何度かあります」
肝心のITスキルも身につきそうにはなかったと言います。「問い合わせは、会社独自システムの操作方法のみ。どれだけ経験を積んでも、他社では通用しないため、スキルアップは実感できません」
川口さんは「派遣先を変えてほしい」と会社の営業担当者に伝えました。ところが、「契約期間が終わるまでは無理だ」と断られてしまいました。そもそも川口さんは、派遣先との契約内容や期間についての詳細を一度も見せてもらっていなかったようです。
次第に川口さんは、人間関係にも悩むようになっていきました。会社の営業担当に相談した内容が、知らないうちに現場のマネージャーへ伝わっていたのです。
●正社員にこだわって就職した川口さんですが、派遣先では思うような活躍ができません。後編【「私は正社員なのに」キャリアアップを夢見て人材派遣会社に入社するも…新卒女性の心を折った派遣先からの“ひと言”】では、川口さんがくだした決断を紹介します。