<前編のまとめ>
正社員の看護師として働く岩船さん(仮名・33歳)は、産休の取得を上司に相談すると、産後最低でも1年間は働くことを約束させられます。
やりがいのある職場で、岩船さんも復職には前向きでした。ところが、実際の子育ては想像以上に大変で、時間に融通のきく保育園にはなかなか入れません。
ところが、岩船さんの復帰を想定していた病院からは、人手不足のために早期の復帰を催促する電話がかかってくるようになりました。ようやく保育園が決まると、岩船さんは急かされるままに職場に戻ります。
●前編:【退職代行のリアル】「産んでから最低1年間は働いて」産休を取るために職場から交換条件…看護師の退職代行依頼数が多いワケ」
上司はパソコンに顔を向けたまま、手でシッシ
実際に復帰してみると、あれほどやりがいを感じていた同じ職場とは思えないほど、見え方が変わっていました。
保育園に子どもを迎えに行くため、岩船さんは定時になれば急いで退勤しなければなりません。同僚たちがカルテの記載に追われているなか、ひとり席を立つだけで気まずかったそうです。退社時間が近づくと同僚たちは岩船さんから不自然に距離を取るようになり、岩船さんが「おつかれさま」と言っても、誰も返事を返そうとはしません。
さらに岩船さんの子どもは喘息持ちのため、発作や熱がよく出ます。保育園から電話がかかってくると、すぐに迎えにいかなければなりません。岩船さんが早上がりすれば、その分だけ同僚の負担は大きくなります。周りは看護師のほか医療従事者たちだけですが、子どもの急病を伝えるたびに、職場は「またか…」と、どんよりした雰囲気になったそうです。
やがて岩船さんが早退を伝えるために看護師長デスクに向かうと、上司はパソコンに顔を向けたまま、手でシッシとするだけになりました。
そして、子どもの看病で数日休んだときには、上司から告げられた言葉が退職の引き金となります。
「世間では君のような人は“子連れ様”って呼ばれているのを知ってる?」