友情を10年間守り続けた契約の力
読者諸兄には一度、友人間のお金の貸し借りで、極めて厳格な契約を結んだ場合の借主と貸主の関係についてイメージしてもらいたい。多くの場合は「もう友人でなくなるのでは?」と思うかもしれないが、必ずしもそうではない。
きっちりとした契約を結ぶことで貸した側は安心でき、借りた側も「きちんと返さねばならない」という意識が芽生える。つまり当事者双方にとって邪魔な思考が生じにくくなるのだ。実際に清水さんと佐藤さんはお金の貸し借りで関係が悪化することなく、契約から約10年間、良好な友人関係が続いた。
清水さんは「あの時しっかりとした契約を結んでよかったと思います。あれがなければもっとこじれるのが早かったでしょうから」と私に語った。
感動の完済からわずか数カ月後の衝撃
契約から約10年、2人の間にあったお金の貸し借りの関係がついに終わりを迎えるときが来た。この10年間、毎月2人は食事をし、その場で清水さんから佐藤さんへ直接2万円の返済がなされてきた。
最後の返済の時、清水さんは涙を流して佐藤さんに感謝した。
「10年間ありがとう、お前のおかげで俺は夢をかなえることができた」
その言葉を聞き、感極まった佐藤さんも号泣。2人で朝まで飲み明かし、これからも変わらぬ友情を誓い合ったとのことだ。
この時確かに2人の間に邪な考えはなかった。しかし、順調だった佐藤さんの生活は徐々に変わり始めていた。
清水さんが後から共通の友人に聞いた話になるのだが、清水さんからの返済が終わる半年ほど前から、佐藤さんは勤務先の業績悪化により収入が減少していたのだ。加えて子ども2人は私立の学校に通っており、支出は年々増えるばかりで苦しい状況だったという。
そんな状況もあってか、最後の返済があった夜から数カ月後、佐藤さんから清水さん宛にお金の返済を促す内容証明郵便が届いたのだ。
●既に返済し終えたはずなのになぜ……? 清水さんは返済済みである事実を証明し、佐藤さんとの友情を取り戻すことができるのか。後編【契約書があっても救えなかった友情…240万円を「返していない」と主張する親友に、男性が突きつけた“意外な証拠”】で結末をお伝えする。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
