「先生、私は信じていたんです。なのに、また返せと言われるなんて……」

清水勇太さん(仮名・40代男性)は、青ざめた表情で息をついた。

彼はかつて親友の佐藤正人さん(仮名・40代男性)から 240万円を借りて、数年がかりでそれを返済した。しかし、後になって佐藤さんから「返済を受けていない」として再び請求が来たのだという。

そんなことが実際に起こるのかと疑問に思う方もいるだろうが、今回はそんな現実を知ってもらうべく、清水さんの話をしよう。

30歳を前にした2人に訪れた人生の転機

大学時代から付き合いのある清水さんと佐藤さん。大学を卒業してからも職場が近く、20代のころはお互い愚痴をこぼしながら夢を語り合っていた。そうして励ましあう日々だったが、30歳を前に2人の人生に転機が訪れる。

佐藤さんはかねてから交際していた女性と結婚。清水さんは本業と両立していた副業が大当たりし、独立することになった。

そこで清水さんは佐藤さんに相談を持ち掛けた。

「結婚したばかりのお前に頼むことじゃないのは分かっている……」

そう言って240万円を貸してほしいと頼んだのだ。これに対して佐藤さんは快諾。

「俺たちの仲だ、嫁も分かってくれるはず」

その後、お互いの関係も考え契約書も作った。互いに実印で押印し、印鑑証明も付した形式で、友人間の契約にしてはきっちりしすぎと言えるくらいのものだった。