デイサービスは老人が使うもの?

それからしばらく、久しぶりに帰ってきた幸代がデイサービスを提案してきた。

「デイサービス?」

その単語を聞き、冨美子は顔をしかめた。老人が使うものというイメージがあり、自分がそこまで老けてるつもりはなかった。

「別に介護だけじゃないよ。施設に行けば、同じような世代の人たちと一緒にレクリエーションができるの」

「え、そうなの?」

冨美子は同世代の人たちと過ごせるということに興味を持った。

「そうよ。お友達ができたら、今よりもずっと楽しくなるんじゃない?」

幸代の提案に冨美子は目を細めた。

正直なところ、デイサービスが自分に合っているかは半信半疑だ。それでも自分のことを考えてくれた幸代の気持ちに応えるために、冨美子はデイサービスを受けることを決める。

同じような境遇の友達が数多くできた

あれからもうすぐ2カ月になる。冨美子は介護認定を受け、幸代が進めてくれたデイサービスを受けられるようになっていた。

最初は老人扱いされているような気がして、あまり気乗りしなかったが、レクリエーションを通じて同じような境遇の友達が数多くできた。施設を利用してないときも、携帯を使って連絡を取り合えるようになったことで、冨美子の生活は一変していた。夫を亡くした寂しさは癒えてきて、もう救急車を呼んで人の気を引こうなんて考えることもなくなった。

冨美子が台所に立っていると、玄関のチャイムが鳴った。手を止めて玄関に向かい、扉を開けるとデイサービスの施設の職員が笑顔で立っていた。

「おはようございます、今野さん」

「ああ、はいはい、今すぐ準備しますからね」

「あれ、とってもいい匂い。何か作ってたんですか?」

「ええ、今日はみんなでおやつを持ち寄りましょうって話になったから、マフィンをね作ってみたのよ」

あれだけおっくうだった料理やお菓子づくりも、施設に通うようになってからは楽しんでやれるようになっていた。

「へえ、いいなぁ。私にも1つ味見させてください」

冨美子は笑顔を浮かべてうなずいた。

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。