洋司は目が覚めてすぐに違和感に気付いた。いつもなら先に起きて朝食の準備に取り掛かっているはずの妻、ゆかりが自分の隣で寝ているのだ。

「ゆかり……? 朝だぞ」

「う……うぅん」

ゆかりの身体を軽く揺すりながら声をかけるが、返ってきたのはつらそうなうめき声だけだった。

今日は例の“持病”が出たのか。

洋司は大きくため息をつきながら、ベッドの上のゆかりに向かって尋ねる。

「どうした? また頭痛か……?」

「……うん。ごめん、ちょっとしんどいわ」

ゆかりは申し訳なさそうに洋司を見上げながら謝った。どうやら今朝は起き上がる気力もないらしい。

実はゆかりは10代のころから、ずっと片頭痛に悩まされてきた。結婚してからも、ときどき、特に雨が降ったりやんだりして気圧の変化が大きいときには頭が痛いと言って寝込むことがあったので、ゆかりの頭痛持ちは洋司もよく知っている。

ただ今年の梅雨は症状がひどいらしく、朝ベッドから起き上がることもできずに仕事を休んでしまうことが度々あった。ゆかりによると、片頭痛の症状が出るときは目の前がチカチカして、頭が割れそうに痛いらしい。カーテンの隙間から差し込む光すらも、苦痛に感じるほどだという。

しかし洋司には、ゆかりの症状が日常生活に支障をきたすレベルのものだとは思えない。