たかが頭痛と思わずにはいられない

頭が痛いときくらい誰にだってある。

でも、そのたびにイチイチ仕事を休んでいたら話にならないと洋司は思う。社会人には責任がある。頭痛を軽んじているつもりはないが、コロナやインフルエンザなどと比べれば、やはり“たかが頭痛”と思わずにはいられない。朝から調子の悪いゆかりを見ていると、にわかにいら立ちを覚えた。自分まで頭が痛くなってくる気がしてならなかった。

そのまま無言で寝室から出て行こうとする洋司に向かって、ゆかりは慌てたように声をかけた。

「あ、洋司さん、食パンとコーンフレークあるから、子供たちに食べさせてあげてくれる?」

「あぁ……分かったよ」

低く返事をして1階に下りていくと、キッチンに置かれたオープンラックにカラフルなシリアルの箱とパンの袋がポツンと置いてあった。

そろそろ小学生の息子2人も起こさなくてはいけない時間だ。洋司は小さく舌打ちをしながら、息子たちを呼びに行った。