<前編のあらすじ>

個人事業主として働くシングルマザーの由佳さん(仮名・38歳)は、双子の息子・海斗さん(10歳)と翔真さん(10歳)を育てながら、取引先企業に勤める浩太さん(48歳)と出会いました。浩太さんには別居している娘・未祐さん(24歳)がいましたが、家族全員が互いを受け入れ、再婚を決意します。

新生活では、海斗さんと翔真さんも浩太さんを実の父親のように慕い、浩太さんも「息子もできてにぎやかで楽しくなった」と幸せな日々を過ごしていました。しかし、その幸せな暮らしは浩太さんの突然の逝去により一変します。

遺族年金の手続きに訪れた年金事務所で、由佳さんは息子たちと浩太さんの養子縁組がなかったことで受給額に大きな違いが出ることを知り、困惑するのでした。

●前編:【知らなかった…子連れ再婚後に夫を亡くした30代女性、遺族年金額を増やすために“しておくべきだった手続き”とは?】

「実の親子のように過ごした」だけでは対象にならない遺族基礎年金

浩太さんは生前30年間、会社員をしていました。会社員だった人が亡くなった場合に支給される遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。

遺族基礎年金は亡くなった人の①配偶者と②子が対象です。②の子とは、18歳年度末までの子、つまり高校生までの子、あるいは一定の障害がある場合の20歳未満の子を指します。一方、①の配偶者は、②の子と生計を同じくしている「子のある配偶者」であることが条件です。

ここでの配偶者と子は、配偶者と子は亡くなった人から見た、亡くなった当時の配偶者や子を指しています。浩太さんが亡くなった当時、浩太さんの配偶者はもちろん由佳さんです。

そして、子については実子または養子を指します。まず、浩太さんと前妻との子である未祐さんは実子ですが、既に24歳になっていますので、そもそも遺族基礎年金の対象となる子ではありません。一方、由佳さんの前夫との子である海斗さん、翔真さんについては、浩太さんとは養子縁組はしていません。由佳さんは「でも、実の親子のように過ごしていたのに……」と思いましたが、由佳さんから見ての実子であっても、亡くなった浩太さんの子ではないことから、由佳さんは「子のある配偶者」ではありません。

そのため、誰にも遺族基礎年金は支給されないことになります。