<前編のあらすじ>

30代の理絵と夫・浩司は2年前に家を建て、独り暮らしだった義母・一美と同居を始めた。しかし一美は、浩司が恩返しのつもりで持たせたクレジットカードで好き放題に買い物をするようになった。

理絵は浩司に買い物を控えさせるよう訴えるが、母子家庭で育った浩司は義母に甘く、真剣に取り合ってくれない。夫婦の温度差は埋まらないまま、一美の浪費は止まらなかった。

ブラックフライデーセールで高級トースターを購入した一美に理絵は苦言を呈する。しかし一美は悪びれる様子もなく、むしろ理絵の留守を狙って荷物が届くようになってしまい、理絵の不安と苛立ちは限界に達しつつあった。

●【前編】「3割引だったから」ブラックフライデーに熱狂し買い物三昧の義母…住宅ローン返済中の30代夫婦が迎えた“限界”

ブラックフライデーの買い物は総額13万円

軽やかなベルの音が鳴り、こんがりと焼き色のついた食パンが食卓に並ぶ。一口食べればわかるとおり、確かに外はカリっとしていて、中はもちもちだ。

「美味しいわねぇ」

一美はバターを塗っただけのトーストを食べながらご満悦だ。

あの日、理絵はなんとか返品させようと奮闘した。しかし夫を説得してなんとか話をさせたあとで、セール品だったために返品不可だったことが分かった。

ちなみに、ブラックフライデーセールとやらで一美が買ったものはトースターだけではない。あのあとも大小さまざまな荷物が届き、理絵が夫のスマホを取り上げて確認した明細は13万円ほどにも及んだ。

さすがに我慢の限界だった理絵が苦言を呈すると、一美は反省して買い物を控えるのではなく、理絵がパートなどで留守にしている時間帯を狙って荷物が届くように工夫をしながら買い物をするようになった。一美はバレないように買い物をしていると思っているようだが、一つ屋根の下で生活をしているのだからある程度は分かる。

そうやっておかしな方向に進んでいる一美に対して、理絵は不安と苛立ちと呆れを募らせていた。