家族3人で交わした約束

「知らない。私、こんなの知らないわよ……」

「何を言ってるんだ。このカードは母さんしか使えないんだ。母さんが買ったに決まってるだろ……!」

「本当よ! こんなお店で買い物なんてしてないわ! それに、私だってこんな高いものを買ったりしないわよ!」

一美は必死の様子で訴えていた。

浪費癖にこそ悩まされているし、小ずるいことを考えたりはするものの、一美は悪意をもって人を騙したり、嘘を吐くような人間ではない。だから、必死で訴える一美が嘘を吐いているようには思えなかった。

「もしかして……不正利用?」

そこから浩司はすぐにカード会社に報告をし、さらに警察にも連絡をした結果、不正利用だったと認めてもらった。

おかげで高額な請求を払う必要はなくなった。

ただ、一美が怪しげなサイトでも疑いもせずにカードを使って買い物をしていたのが原因だということも分かった。そのことを警察から一美はしっかりと注意をされていた。

   ◇

不正利用の件がひと段落して、一美は理絵たちに謝ってくれた。

「ごめんなさい。何も考えずにお金を使い過ぎちゃって……。ずっと生活が苦しかったからこんなにものを買えるようになったのが嬉しくてつい……」

浩司はそんな一美に目を向ける。

「母さんへの恩返しのつもりでカードを渡したからそれは良いんだけどさ。もう少し考えて使ってくれよ」

理絵はそこで一美に声をかける。

「私は徹やお義母さんたちといつまでも幸せに生活をしたいと思っています。そのためには節度ある買い物をしてほしいです。私も夫も仕事は頑張りますけど、お義母さんにも協力をしてほしいです」

理絵がそうお願いすると一美は力なく頷く。

「ごめんなさい。これからは迷惑をかけないようにするわね」

それから一美は本当に無駄遣いをしないようになり、理絵は胸をなでおろした。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。