優しかった夫の豹変
その日は久しぶりにキムチ鍋をして家族4人で美味しく食べたあと、一美はソファに座りテレビを見ていた。すると何か意を決したように夫が一美に近づいてテレビを消した。
「浩司、どうかしたの?」
何も予想できてない一美は明らかに戸惑っていた。
「母さん、さすがにもうこれはダメだよ……」
そう言って浩司はスマホを突きつけた。
「え? 何が?」
「分かるだろ? 使い過ぎなんだよ……!」
「私、そんなに使ってないわよ……?」
一美は不安そうな顔でそう言い返していたが、それを聞いた理絵は内心呆れかえっていた。
もはや自分がどれだけ買い物をしているのか把握できてないらしい。ここまで放置しておいたのも問題かもしれないが、さすがに改善してもらわないといけない。
「これ見てもそんなことが言えるのか?」
夫は目を向けずローテーブルにスマホを置いた。
「母さんには感謝してるよ。たくさん苦労もかけたと思う。だからできるだけ恩返しをしたいと思ってた。でもさ、こんなに使うなんてあり得ないよ! 限度ってもんがあるだろ……⁉」
夫の様子を見ていて、理絵はだんだんと怖くなってきた。
あれだけ一美に甘かった夫がこれだけ怒るとなると、相当な額を使ったのだろう。考えたくもなかったが、理絵は夫に近づいて、スマホの画面をのぞこうとした。
「ちょっと落ち着いて。そんなに使ってたの?」
「ああ。トータルで50万くらい使ってたんだよ」
「ええっ⁉ そんなに⁉」
額を聞いて思わず理絵は声が大きくなった。理絵の予想を大きく上回る額だった。
