土曜日の昼下がり、葵は大学時代から友人である千紗とカフェでお茶をしていた。
お互い、1浪して大学に入っているという境遇から仲良くなり、就職をした後も職場の愚痴を言い合ったりして支え合ってきた友人関係だった。
しかしそんな千紗との関係に差が出てきていると葵は思っていた。
千紗は1年前に結婚をしたのだ。同じような悩みを持ち、共有していた関係なのだが千紗の最近の悩みは子供ができないというものだった。悩んでいることに寄り添おうとはするのだが、自分よりも一歩前を歩かれてるような感覚がずっとあった。
「それでどうなの? 葵はまだ結婚しないの?」
ひとしきり悩みと愚痴を言い終えて、千紗は葵に質問をしてきた。
「いやそりゃしたいよ。もうだって32だよ。焦ってるに決まってるじゃん」
「彼氏さんはどうなの? 結婚するとか言ってくれてるの?」
葵は曖昧にうなずく。
「……いや、そういうのはあんまりないかな」
「プレッシャーを掛けたりとかはしてないの?」
「……別にそれとなく言ってはいるけど」
千紗はため息をつく。
「そんなんじゃダメだよ。私も結婚するときには勇人にかなり圧をかけたもん。じゃないと男なんていつまでも逃げ続けるだけだよ。こういうときは女がしっかりしないとダメなんだよ」
だいぶ偏った意見だなと思いながらも、葵は胸の内を明かす。
「……結婚はもちろんしたいと思ってる。でもね、清志としたいかと言われたらそれは微妙なんだよね」
葵の言葉に千紗はどこか納得したようにうなずく。
「……ああ、そうなんだ」