<前編のあらすじ>
1年前に念願のマイホームを購入した麻由美と夫・秀行は銀行から住宅ローンの返済額が月3万円も増額されるという通知を受け取る。
中学生の息子・孝典は来年高校受験を控え、学費のことを考えれば、月3万円の増額は大きな負担だ。
秀行は「だから俺は固定金利がいいと言っていた」と変動金利を勧めた麻由美を責め始める。激しい口論に疲れ果てた麻由美は、幸せの象徴だったはずの家が重荷に思えてしまうのだった。
●前編【「お前のせいでこんなことに」マイホーム購入から1年、変動金利で住宅ローン月3万円増額の通知に夫が豹変…夫婦に訪れた亀裂】
孤独な戦いを始めた麻由美
麻由美はたった独り、節約を始めた。
いくつかのサブスクを解約し、使っていなかった洋服やアクセサリーをフリマアプリで売りに出し、車通勤をやめて自転車で会社に行くようにした。
もちろんこれで月3万を捻出し続けることは難しい。根本的な解決にはなっていない。
そんなことは麻由美だって分かっていたし、本気で節約をするのなら秀行たちにも協力してもらったほうがいいとは思っている。
だが、変動金利を勧めてしまった後ろめたさがある手前、麻由美は素直にそう言い出すことができなかった。
◇
その日、麻由美は秀行と一緒に休日に普段とは違うスーパーに買い物をしに向かった。
ローン値上げの問題は何も解決していないし、秀行と和解したわけでもなかったが、それはそれとして麻由美たちは家族としての生活を続ける必要があった。
ちょっと足を延ばしたスーパーは値段の安さに定評があり、荷物持ち役である秀行がいるタイミングでまとめ買いしてしまおうと思ったのだ。
スーパーについた麻由美はあらかじめメモを取ってきていた通りにどんどんと買い込んでいった。
店内を回っていると、2人はやがてお酒コーナーを見つけた。
「ほら、いつものお酒、ここで買いだめしておきなよ。10円くらい安いよ」
毎日の晩酌のために普段買い込んでいるお酒も、ここでこうやってまとめて買えば多少は出費を抑えられる。しかし秀行は首を横に振った。
「いや、いいよ」
「何でよ? もうストックなくなってたでしょ?」
「いやいいから。酒は少し控えようかなと思ってるし」
そう言うと秀行はお酒コーナーから離れてしまった。麻由美は秀行の後ろ姿を呆然と見ていた。
