車中で明かされた本音

帰りに車中で麻由美は気になっていたことを直接問いただしてみた。

「ねえ、もしかしてお酒代を節約しようとか、思ってくれてる……?」

ハンドルを握る秀行は前を向いたまま答えた。

「……お前だって自転車通勤とかしてるだろ。俺だけ何もしないなんてことはできないよ」

「でもそれは私が変動金利を勧めたから。その責任を取ろうと思って」

秀行は苦しそうな顔をする。

「悪かったよ。お前に責任を押しつけるようなことを言って。俺だって正直変動金利で納得してたんだ。そこに何の不満もなかった。でもあの日は仕事の疲れとかストレスとかいろいろ重なってたんだ。それでついお前に当たってしまって……」

秀行の言葉を聞き、麻由美は小さく息を吐いた。

「八つ当たりされてたって言われて簡単に許すことはできない。でも素直に話してくれたのは嬉しい」

秀行が仕事が大変そうだとは思っていたが、そこまで追い詰められてることに気づけてなかった。もう少し言い方とか言うタイミングとか麻由美自身にも気をつけないといけなかったと心の中で反省する。

「ローンに関しては麻由美が責任を感じることは何一つない。そう思わせてしまってごめんな」

反省を口にする秀行に対して麻由美は首を横に振る。

「もういいの。それよりも先のことを考えよう。今はそうしたほうがいい」

麻由美がそう言うと秀行の顔が少しだけ柔らかくなった。

「俺も節約に協力するよ。俺も自転車通勤ができればいいんだけど距離的に難しいからとりあえず酒はやめようと思う」

「……本当にいいの? お酒好きだったでしょ?」

「いいんだ。この前の健康診断でもガンマGTPが悪く出てたし、いつかはお酒はやめないとなって思ってたんだよ。これが良い機会だし、やめようかなって」

麻由美は申し訳なさを感じながらも頷く。

「ありがとう。正直秀行も協力してくれるのはすごく助かるよ」

「家のこともだけど一番は孝典のためだ。あいつは勉強ができるから良い大学に入れてやりたいしさ」

「うん。それは私も一緒よ」

車中での会話によって完全に2人の中にわだかまりはなくなった。