麻由美は車を家の敷地内の駐車場に止めて、足早に玄関へと入った。広々とした玄関のシューズクローゼットの上には花瓶と写真立てが置かれている。そこには家の前で嬉しそうな笑顔を浮かべる自分と夫の秀行、そして中学生の息子の孝典の姿がある。
麻由美たちは、1年前に念願だったマイホームを購入した。
土地を探したり手続きをしたりなど大変なことはたくさんあったがそれでも家を買ったのは間違いではないと思っている。都心部から離れた閑静なエリアだが、通勤も不便ではなく、自然も豊かで住みやすい。ここにしたのは間違いなかったと麻由美は確信していた。
麻由美は写真の横のトレイに置いてある封筒や手紙を手に取った。先に帰ってくることが多い孝典が郵便物を取ってシューズクローゼットの上に毎回置いてくれているのだ。基本的には水道料金や廃品回収業者のチラシが多いのだが、今日はその中に見慣れない手紙があった。差出人を確認すると銀行からで、住宅ローンに関するものだった。麻由美は特に何も考えずまとめて郵便物を持ってリビングに向かい、すぐに夕食の準備を始めた。
最新のシステムキッチンでIHと食洗機がついている。料理をするのがこの家に来てからさらに楽しくなったように麻由美は感じていた。
リビングには大きなソファと大画面のテレビ。時間があればあそこのソファに秀行と並んで座り映画を見たりする。麻由美はこの家で生活をできることに心から幸せを感じていた。
家族3人で夕食を取り、ひと段落したころ、ふと郵便物の存在を思い出した麻由美は、封を剥がして中を確認する。
「……え?」
1人で思わず声を出していた。
