夫の怒りが麻由美に向けられる

「……ったく、だから俺は固定のほうがいいって言ってたんだよ。こういうことになるのが嫌だったんだ」

秀行が不機嫌にそう言い放った。

「え……?」

「こんな風に上がった下がったで一喜一憂することになるから俺は嫌だったんだよ。最初から固定金利にしておけば、いちいちこんなことで悩む必要もなかったっていうのにさ」

「ちょっと待ってよ。2人で話し合って決めたことでしょ。そりゃ最初はあなたは固定金利が良いって言ってたけど、私が説明をしたら納得してくれたじゃん。なのに私だけが悪いみたいな言い方はしないでよ」

「納得したわけじゃないよ。お前がしつこいから渋々応じたってだけだ」

秀行が吐き捨てるように言ったことに麻由美は怒りを覚えた。

「だったら最初から断って固定金利にしておけばよかったでしょ……⁉ 今まで何も言ってなかったくせにちょっと金利が上がったからって文句言うなんておかしいよ」

「お前がもうちょっとちゃんと考えておけばよかっただけだろ! 金利のこととか何も知らないくせに適当なこと言いやがって……! そのせいでこんなことになってるんだろ⁉」

「不勉強なのはどっちよ。そもそも固定金利って変動金利よりもかなり利率が高いんだから」

しかし秀行は顔を赤くして言い返してくる。

「この先も金利が上がっていったら、いつかはとんでもない額を払わないといけなくなるんだろ⁉ そうなったらどうするつもりだよ⁉」

「そんなことを今から言っててもしょうがないでしょ!」

麻由美が大声で応戦すると秀行は舌打ちをしてリビングを出て行ってしまった。1人残されたリビングで、麻由美は深くため息を吐く。幸せの結晶だったはずの家の風景が、急に生活を蝕む腫瘍のように思えてしまった。

●突然届いた住宅ローンの金利上昇通知を見て、変動金利を勧めた麻由美に怒りをぶつける夫・秀行。口論の末、深い亀裂が走ってしまい……… 後編【「八つ当たりしてしまった」月3万円増の住宅ローンに激昂し、妻を責めた夫が明かした本音…息子のために夫婦が見直した生活の無駄】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。